留学の体験記

留学の体験記Bさん

わたしが留学したのは、フランス西部、ロワール川流域の古い町、アンジェです。

 

20年前のことになります。大学のプログラムの一環として、3回生の時に8人の仲間とともに提携大学付属の語学学校で一年間学びました。

 

フランス留学を決めたのは、小学校5年生の時。図書館で借りた「アルセーヌ・ルパン全集」で主人公怪盗紳士ルパンが愛するフランスに恋してしまったためです。

 

だからフランスに憧れてというあるとか、語学を生かして外交官になるであるとか、通訳になって国際的に活躍するなんて目標を持っていたわけではなく、ただ恋したフランスに行くため、最終的にはその一部に、つまりはフランス人になってあの国で一生を送る手段として留学を選びました。

 

考えてみれば、留学の理由としてはかなり変わっており、ある意味「不純」な動機であると言えるかもしれません。

 

そんなわたしを危惧していたのが、留学の相談役の一人であった、ベルギー出身の教授でした。「フランスは夢の国なんかではなく、世界の一国にすぎないんだからね」。

 

眼の中にハートを浮かべて留学後のバラ色の人生を想像(妄想)するわたしに、彼は何度もそう言ってくださいました。

 

そして、彼の危惧はものの見事に的中。妄想は妄想でしかなく、勝手に抱いた理想と現実の大きすぎるギャップに最初の2ヶ月間程度は盛大にへこみましたが。

 

それでも。20歳で留学したことは、わたしのそれからの人生の根幹をなす素敵な得難い体験だったことは、間違いありません。